初めまして。横須賀ぷらから通信です。

【追浜】ヨソモノ各駅探訪記02 ~ 追浜〈WEST〉篇~

はじめに。

最初にお伝えしておきます。このシリーズは、横須賀をあんまり知らない”ヨソモノ”である筆者が【起点は駅】【行き先を決めない】をルールに街を歩く、という「コース」と呼ぶにはいささか乱暴な散歩です。
あてもなく歩くから見えてくる(かもしれない)街の姿を一緒に楽しんでいただければ、そんなうれしいことはありません。

訳あって『追浜(おっぱま)』西側を攻めに来た。

横須賀と横浜との市境を歩いた前回に続き、またもやってきました「追浜(おっぱま)」駅。

ホームにある駅名看板が、横浜DeNAベイスターズバージョンに変わっていました。上りホームにいるのはピッチャーの山﨑康晃選手。

なんで同じ駅に再び来たのか。それはですね、横須賀在住の知人に「この前、追浜を歩いた」と話をしたところ「じゃあ、マガイブツ行った?」と聞かれたんです。

マガイブツ? 

脳内ですぐ漢字変換ができませんでしたが、なんでも追浜駅から歩いて行ける『鷹取山』の山中に、岸壁に掘られた仏像=『磨崖仏(まがいぶつ)』があるというじゃないですか。

それは見たい。

しかし冒頭『はじめに。』にある、 【起点は駅】【行き先を決めない】をルールに街を歩く と決めたのは、他の誰でもないワタシ……。「見たい。でもルール。見たい。でもルール」と逡巡する心に、止めどなく流れるのはゴダイゴの名曲『ガンダーラ』(磨崖仏のイメージ)。ええい、迷っているなら行ってしまえ、とそのまま鷹取山を目指すことにしてしまったのです。

のどかな住宅街×首斬りのインパクト。

さて、行くと決めてしまえば心は軽やか。横須賀街道(国道16号)沿いの商店街を南下し、前回ちらりと立ち寄った良心寺に向かう踏切を越えて住宅街に入っていきます。

線路脇をぷらぷら歩いて行くと、京急の電車がすぐ横をブーンと通り抜けていきます。天気は気持ちのよい晴れ。のどかな街並みに京急の赤い車体がよく映えて、なんだか気分が明るくなります。待っててね、マガイブツ!

そのまま進んでいくと、遠くに碑のようなものが見えてきました。近づくほどにお墓ライク。なんでしょう……文字が見える距離まで来ると、ハッキリ「首斬」と書いてある。快晴の昼間なので平静に受け止めてますが、夜道で初遭遇したら結構コワイ。

傍らの説明書きによると、こちらは『首斬観音』。江戸時代にあった、干ばつ・飢饉の影響からこの付近でも一揆や打ち壊しが起こり、治安が悪化して盗難などの犯罪が急増。さっき通ってきた踏切付近にあった『浦郷陣屋』で罪人が裁かれ、処刑されたのだとか。大正末期に入り、国道31号線(現在の国道16号)の整備工事を行ったとき、当時のものであろう頭蓋骨がいくつも出てきたため、その弔いとして建てられたものだそう。

近くに住む方々の手によるものでしょうか、キレイなお花が生けられていました。(傍らに置かれた「ドロボーSTOP! 防犯モデル地区」の表示も、過去の経緯を知ると含蓄のあるアイテムに見えてきます)。写真を撮らせていただきます、とご挨拶。先へと進みます。

ここまでグーグルマップを頼りに歩いてきましたが、電波がいまひとつなのか、自分の位置と地図がズレてるらしいことが判明。しかもこの辺りは、碁盤の目とはほど遠いうねうね道の住宅街。道も細いので、私道なのか公道なのか分かりづらく、入ると行き止まりだったりしてウロウロ。

認めましょう。ワタシ、道に迷ってますね。

地元の方に助けられ、いざ鷹取山へ。

さて、どうしたものか。ぐるりと周囲を見回すと、目の前のお宅から出てくる男性の姿を発見。チャンス!とばかり声をかけてみました。

「鷹取山に行きたい? ああ、この辺りは住宅街で目印になるものもないでしょう。ハイキングに来て迷い込む人がよくいるんですよ。良かったら途中まで案内します」と、わざわざイヤホンを外してにっこり。

出かける前にご迷惑では……と恐縮するワタシを尻目に、その男性は地元に住んでないと絶対通り抜けようと思わない獣道のような通路を「こっちですよ」とスイスイ歩いて行きます。

「私道も多いから、細かい道が地図に書かれてないみたいで、よくあることです。気にしないでください。そうだ、鷹取山に行くなら磨崖仏は知ってますか?

でた!マガイブツ!

「はい、知人に聞いてそれを見てみたいと思って来たんです」
「そうですか。今日は天気がいいので最高ですね」

3分ほどでメインルートに到着。ようやく機能を回復し始めたグーグルマップを見ながら「道は右に左に曲がりますが、この指示どおり歩いて行けば10分ほどで山の入口に着きますよ」と男性。深々と頭を下げる私に、爽やかに手をあげて去って行きました。

うねうねと曲線を描く道。土地勘がないと方向感覚が分からなくなってきます。でも楽しい!

なんて親切な人でしょう、追浜。まだ顔も知らないマガイブツが助けてくれたのかもしれません。グーグルマップの指示によると『湘南鷹取2丁目公園』を突っ切れ、とあります。公園入口の階段を上ると、一切の遊具も見当たらない潔い空間の奥に階段が延びています。

長いなあ、階段。横須賀に暮らす=高低差を受け入れること、と分かってはいるものの、ステイホームで弱った足腰が悲鳴をあげそう。気持ち負けしないうちに黙々と登りきると、これまで歩いてきた雰囲気とは打って変わった「THE 住宅街」。区画整理された街並みが目の前に広がっています。

大きな家が並ぶ湘南鷹取エリアの住宅街。ご近所友だちなのでしょうか、ジャージ姿の中学生グループが前を歩いていました。

この辺りはグーグルマップの反応も絶好調。とうとう山の麓までにたどり着きました。そしたらあるじゃないですか『鷹取山公園・磨崖仏』の看板が!しかし、また階段。助けて~。よっしゃ、と自分に渇を入れ、息切れしながら登り切り、水道水を貯めておく『鷹取第一配水池』の脇を抜けると、なんか岩岩してきた!

うっそうとした木々の奥に、切り立つ岩壁。それもなんだか、スパッと切った感じのすっきりとした断面です。なんでしょう、ここ。神秘的。しかもすぐ横では、垂直な岩壁をよじ登っているお兄さんがいます。集中の邪魔をしそう(見るからに危険)なので写真は撮りませんでしたが、いわゆるロープを使った本格的なクライミングです。

迫力のある風景に後ろ髪を引かれながらも、目的の磨崖仏を目指して進んでいくと、追浜の街が眼下に広がる景観自慢の遊歩道がありました。さっき歩いてきた高低差のある土地を上から眺めると、隆起する緑の間の低いところを、家々がまるで水のように流れ込んでいます。遠くには東京湾の水平線も。きれいだなあ。

しばし眺めを楽しんで歩き出すと「急な階段」という、知りたいような知りたくないような告知が。もうここまで来ると、シダや苔がいっぱい生えている普通の山道です。足を滑らせないよう気をつけながら歩くと、軽く汗ばんできました。

こういうとき、つい「蚊に刺されたらヤダな」とか思ってしまうなんて、ワタシも年を取ったものだ。

ついに対面。ド迫力の磨崖仏!

土と木でできた階段を黙々と登っていくと、再び岩壁のある広場に出ました。さっきのお兄さんが登っていたよりもさらに大きく、ひときわ高い壁面のすごく高い所に、やはりクライマーのお兄さんがいます。よくもまあ、あんなところまで!

岩の上部に小さな人影があるのが見えるでしょうか?

そろそろ対面できると嬉しいのですが、いったいどこにおられるのでしょう磨崖仏。岩と岩の間にある細い通路のようなところを抜けていくと……いきなりドーンと出た!

いやいやいや、想像以上に大きいですよ。道に迷ったことも、階段がキツかったことも、(目的地を決めないルールを破ったことも)、すべてOKと思える迫力のお姿。一瞬あっけにとられてしまいましたが、これは登ってくるだけの甲斐はある。

磨崖仏のあるこぢんまりとした広場には、『鷹取山と磨崖仏』と題して地名の由来や歴史、仏像の成り立ちについての説明書きがありました。『鷹取』というカッコいい地名は、江戸城を築いたことで知られる太田道灌が鷹狩りをしたことに由来する、という説があるのですね。そしてあのスキッとした岩壁の断面は、この地が石切り場だったのが理由だとは。いろいろ納得です。

手を合わせた後は、しばし黙って仏様との静かな時間を過ごします。心なしか、さっきよりもハートに染みる鳥の声。なんでしょう、とても不思議な空間。美しきアルカイックスマイルをしばし堪能します。

鷹取小学校の子どもたちが書いた「磨崖仏=パワースポット」を告げるかわいいポスターも発見。

「写真をとった方がいいよ!」リョーカイだよ!たしかに元気になったよ!

この磨崖仏は「弥勒菩薩像」で、制作したのは横須賀市の彫刻家・藤島茂さんWikipediaによると札幌生まれとあり、道産子の私はちょっぴり親近感を覚えました。

いやあ、いいものを見た。山道はこのまま逗子側に続いているようですが、今回は出発点の追浜駅に戻ろうと思います。というわけで来た道をもう一度戻りましょうか。

山の上の“湘南”を眺めつつ、追浜駅へ。

登山道の入口まで戻ってくると、さっきは気づきませんでしたが目の前に『西友』がありました。広い空の下にある横長のスーパー。なんだかカリフォルニア気分。

さっきまでいた鷹取山を振り返ると、山頂近くの岩にいたお兄さんの姿が小さく見えました。

こんもりとした鷹取山のてっぺん、ちょこんと覗いた岩の真ん中あたりに、小さくお兄さんの姿が。

同じ道を戻るのもつまらないので、帰りは駅の北側に抜ける道を歩いて行くことにします。西友の前から延びる道は歩行者天国になっており、道幅もゆったり。しかしこの『湘南鷹取』エリア、来るときに通った区画整理ゾーンも大きな家が多いなと思いましたが、この辺りはさらに輪をかけて立派な家ばかり。クルマもなく、平日で人も少ないせいか、映画のセットに迷い込んだような気持ちになります。

実はさっきから思っていたのですが、なんでここ「湘南」鷹取なんでしょうね。ヨソモノのワタシにとって、湘南って海のほうというイメージなのですが、この辺りはどう見ても山の上。そこで見てみましょう、Wikipedia。 「西武不動産が鷹取山周辺の尾根や谷を切り土したり、盛土するなどして造成した住宅団地」と書かれています。区画がすっきりしている理由はそのせいなのかしら。

さらに地名の由来のところ。「三浦半島の東京湾側に位置し、湘南という地名のイメージのよさから地名に採用されたという由来のほか、湘南電気鉄道から採用の由来という意見もあり、真実は不明である」。ミステリアスな締めですが、さてどうなんでしょうね(wikiはあくまでも“参考”として使わなければ)。

道は緩やかに下り、桜並木に変わりました。瀟洒な邸宅が木々の向こうに並んでいる風景は、まるで鎌倉山のような雰囲気。

並木を抜けると、左手には『追浜小学校』が見えてきます。それにしても斜面の土砂崩れを防ぐ右サイドのコンクリート壁がかなり暴れん坊こういう壁面を「ワッフル」と呼んで愛でているという、みうらじゅんさんにぜひお見せしたいクオリティ。

小学校を越えると、昭和の顔をした懐かしい雰囲気の街並みが戻ってきました。

すでに「湘南鷹取」ゾーンを抜けたようで、このあたりの地名は「鷹取町」となっています。

なんとなく景色に見覚えがあるなあ、と思っていたら『掛田商店』があるじゃないですか。以前、横須賀が地元の友人に紹介してもらった酒屋さんで、日本酒からワイン、泡盛までお酒のラインナップが素晴らしいうえ、製法にこだわった調味料や自然栽培の野菜なども置いてあるのです。

なんていいお店だ……と感動し、ときどき訪問していたのですが、追浜駅から歩いてこられる場所だったとは。いつもクルマだったので意識していませんでした。残念ながら今日はお休みの様子ですが、また再訪します!

踏切を越えると、前回も立ち寄った「北原のパン」こと『北原製パン所』の前に出ました。追浜駅はもうすぐ。無事に戻ってこられたようです。

今回の散歩は迷子込みで、しめて2時間でした。

*****

ヨコスカに越してきて2年。土地勘がないもので、普段はグーグルマップやカーナビ頼りで動きまわっていますが、やっぱり歩いてみると位置関係が肌で分かるし、匂いや音も含めた五感の情報は、街の温度を立体的に伝えてくれる気がします。便利なものを活用するのはいいことですが、頼りっきりではいけませんね。

次回は、京急田浦エリアを歩く予定です。どうぞお楽しみに!

今回歩いたルート

上のマップが開けない場合はこちらをお試しください。

ヨソモノヨコスカ
ヨソモノヨコスカ

2018年秋、住み慣れたトーキョーを離れ、ふらりと横須賀に住み始めました。
ヨソモノの目から見たヨコスカを綴っています。

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