グリーンウォッチングヨコスカ
ふと見つけた木の案内

以前に平作川沿いを歩いたとき、衣笠栄町公園でこんな木製の案内を見つけました。調べてみると、昔横須賀市が実施していた事業で、現在は終了してしまっているものとのこと。
横須賀市のウェブサイト上にある「市民の声」には「久里浜駅前の案内板を撤去した」旨が書かれていました(当該ページは掲載期間が終了して削除されています)。現在残っているものも、これからどんどん撤去されてしまうかもしれません。今のうちに歩いてみたいなあ、と思っていたところ、図書館に横須賀市が発行した冊子が残っているのを発見しました。
ルートは図書館で確認しました

グリーンウォッチングヨコスカ事業は横山和夫市長の時代に行われ、1987(昭和62)年に最初の11コースが選定されました。そののち1989・1993年に追加のコースができ、計3冊のブックレットにその詳細が残っています。
横須賀市立中央図書館でブックレットを読んでみたところ、「美しいみどりの発見キャンペーン事業」の一環で、とくに緑に恵まれた地域を「みどりのモデルコース」として選んだそう。ブックレットには子どもたちの写真がたくさん使われており、とくに次世代を担う横須賀市内の児童に向けて緑と親しむ機会を提供しようとしていたことが窺えます。
完全なる余談です。年代的にわたしはグリーンウォッチングヨコスカ事業が対象としていた子ども世代にどんぴしゃで該当するのですが、あまりこの名前を大人から聞いた覚えがありません。道を歩いているときにどっかで看板を見かけたことがあるかもしれないなあ、程度。当時どこかでは何かしらイベントや啓発事業をやっていたんじゃないかと思うんですが、ご記憶にある方はいらっしゃるでしょうか。
今回歩いたルート

ぷらからにはまだ堀ノ内駅周辺を歩いた記事がないので、今回は1989年に発行されたブックレットから、「三春町コース」を歩いてみました。2冊目のコースは特に花が豊かなエリアを選んだそうで、さてさてどうなるかな?
堀ノ内駅から出発し、泉福寺へ

あいにくの曇天ですが張り切って歩きましょう! 堀ノ内駅の改札を出たら右手に進み、大きな交差点の手前にある細い道を進みます。
まずはひとつ目の案内板がある(あった?)泉福寺へ向かいます。グリーンウォッチングヨコスカのブックレットには、このように書かれています。
秋から冬に、美しい赤い実がなるクロガネモチの大木と、7月から8月に咲くハアザミ(アカンサス)の花はみどころです。

現在ではグリーンウォッチングヨコスカの案内らしきものは見当たりませんでした。うーん、出だしから幸先が悪いかなあ……。残念ですが山門前の写真をぱちり。

道なりに進むと金堀トンネルのある交差点に出ます。トンネルではなく右手のぐっとカーブする道へ。
三春町5丁目第2公園

しばらく歩くとふたつめの案内板ポイント、三春町5丁目第2公園が見えてきます。「秋にはドウダンツツジの紅葉が楽しみな公園です」とあります。

ドウダンツツジは真ん中のベンチ兼花壇の中にありました。低く刈り込まれている茂みです。まだまだ紅葉ははじまったばかりで、おそらく11月ごろが見ごろになるんじゃないでしょうか。

広々としてきちんとメンテナンスされている公園です。しかし残念ながら、見渡したかぎりグリーンウォッチングヨコスカの案内板らしきものはなさそう……。

かわりにと言ってはなんですが、かわいいスズメの車止め、ピコリーノの写真を撮って先に進みます。このルート、グリーンウォッチングヨコスカの名残は果たしてあるんでしょうか。不安になってきました。
上ったり下ったり

ルートマップの通りに進むと、住宅街の中にぽつんとある階段へと誘導されます。この先はしばらくGoogleマップに表示されていない道を進みます。通っていいのかな……と念のため確認しましたが、一応問題のない道路のようです。

犬の散歩道としてよく使われているみたいです。やや急めな階段。てってこ下りていきます!

細い道のまわりに住宅が密集したエリアを抜けると、線路のずいぶん近くまで戻ってきていました。高架の下をくぐりたくなりますが、線路と平行に進みます!

きょろきょろしながらぼんやり歩いていたら、うっかりルートからそれてしまいました。UターンUターン。まさに「ひとつ曲がり角 ひとつ間違えて 迷い道くねくね」(「迷い道」)です。作者の渡辺真知子はちょうどこのあたりのご出身。

そこまで急ではないのですが長く続く階段。どうしてこんなコース選定に……きっとこれは元気がありあまっているキッズの体力を少しでも削ぐための保護者の陰謀に違いない……などと思いはじめたところで道がちょっとおもしろくなってきました。

前方に、がけに対して垂直に生えているヤシの木? シュロの木? が見えるでしょうか。わたしの頭すれすれまで来ていたこの木、ちょっと門番みたいです。通行を許可してもらえたようでうれしくなりました。(でも危ないですね)

プチ切り通しだ! とテンションが上がりながら通行。このあたりが峠だったようで、少しするとまた下り坂になりました。

この、すでにある階段に新しい階段を適当に合流させた感じ、三浦半島っぽくて好きです。

ようやく平坦な道に。立派な擁壁がある道を進むと……

車両用の公郷トンネルと、歩行者用の山崎ふれあいトンネル、ふたつのトンネルが並ぶ場所に出ました。トンネルの前はちょっとした広場になっています。

ここでふと、さっき見たような造形を発見。

ピコリーノを解体して、溶接しなおしたような不思議なオブジェが立っています。

よく見ると車止めにも不思議な装飾が。もしかしたら以前この場所にあったものを再利用したのかもしれませんね。地域の人に大事にされている感じが素敵。


山崎ふれあいトンネルの内部には「クリーンよこすか」のポスター入選作(のコピー)が掲示されていました。

山崎ふれあいトンネルを抜ければすぐに山崎小学校です。そちらのほうに行きたくなってしまいますが、なんとルートはトンネルを迂回して山越えコース!
グリーンウォッチングヨコスカのコースが作られたころは、まだ山崎ふれあいトンネルはできていませんでした。公郷トンネルは内部が狭くて危ないと有名でしたから、事故が起こらないようなルート選定になっているんですね。しょうがない。コースに従いましょう。

のろのろ、と坂道を上り、とろとろ、と下ろうとしたらどーん! と長い階段が。そんな殺生な……! と思いかけましたが大丈夫、ルートは左手の坂道です。

坂を下ってぶじに公郷トンネルの反対側に出てきました。高さ制限の標識が目みたいじゃないですか?
山崎小学校
道を渡ってすぐのところにある山崎小学校が、グリーンウォッチングヨコスカみっつ目の案内板ポイントです。ブックレットではゲッケイジュ・イチョウ・ソメイヨシノが推されています。校門のわきには貫禄あるソメイヨシノの大木がありました。校内の子どもたちが写ってしまいそうだったので写真はやめておきましたが……

とうとう見つけました。校門から少し離れたところのフェンスに、グリーンウォッチングヨコスカの案内板が! とうとう見つけたぞ!


比較的若そうなソメイヨシノもたくさん植わっていました。ああ良かった、グリーンウォッチングヨコスカの痕跡が見つかったぞ……!
国道16号線沿いへ

小学校前の道をずんずん進み、国道16号線方面へ向かいます。交差点のところに、次なる案内板ポイントが。

この場所にはサザンカがあると書かれていました。しかしサザンカも案内板も見当たりません。なくなっちゃったかな、残念。
三春コミュニティセンター

三春コミュニティセンターは、グリーンウォッチングヨコスカのブックレットには三春地域自治活動センターという旧称で掲載されています。ここにも案内板がある模様。さてさて……と見渡しましたがよくわかりません。でも広場に入ってみると……

以前に平作コースで見た木製のものと同じ形です。そして上部には金属板が。昔はここに何かの説明が書かれていたのでしょうか。内容はすでに読みとれなくなっていますが、残ってたぞ! しかしここでそこそこの雨が降ってきました。なんとなく濡れちゃってるのはそのせいです。
下水処理場と三春公園
堀ノ内駅に戻る前に、コースはいったん寄り道をします。下町下水処理場の隣にある三春公園も案内板ポイントになっているそう。三春コミュニティセンター近くの横断歩道で16号を横断します。

下水処理場の建物、よくよく見ると直線的でかっこいい造形をしています。窓の格子がちょっと複雑なパターンになっているのとか、屋上にある多角形の塔屋とか、いいですね。耐震のための鉄骨が入る前はもっとシンプルですっきりしたデザインだったんだろうな。
三春公園その1

下水処理場の前で左に曲がり、放置自転車を収容するスペース沿いに歩いていると歩道橋みたいな階段が現れました。ここなんだろ。

この先にある三春公園の一部なんですね。建物の屋上っぽいですが……

タイル貼りのめっちゃ広い空間でした。ところどころベンチがあるものの、屋根がないため雨の日の利用者はゼロ。暑さ寒さや風の強さを考えるとなかなか難しいかもしれませんが、それでも晴れた日は気持ちよさそうな空間です。
三春公園その2

もう一度階段を下りて先に進むと、児童公園のほうの三春公園の入り口が。右隣にはタイル貼りのほうの三春公園に行くためのスロープがありました。車椅子の人などが通るときは車止めを開放してもらえるのでしょうか。

何しろ雨降りなので写真の色合いが荒涼としておりますが、おもしろそうな遊具がいくつかあります。

ゾウさんなのかマンモスなのか。もしマンモスなのだとしたら、隣のコアラっぽい生き物は有袋類の祖先とされるディプロトドンなのかもしれません。あと、背後の砂場にある謎のピラミッドもめちゃくちゃ気になります。
さてさて、本題は遊具ではなくグリーンウォッチングヨコスカなのです。ここではヤマモモが見られるとブックレットにはあるのですが……。

ヤマモモではありませんが、なんかあるぞ!

かなりかすれてしまっていますが、グリーンウォッチングヨコスカのロゴが入っています。木に直接取りつけるタイプはこの緑のやつなんだな。

ちなみに、公園の柵に取りつけられた似ているけれどもちょっと違うオオシマザクラの案内板。QRコードが入っているのでかなり新しいものと思われます。昔はグリーンウォッチングヨコスカのものが使われていたのかもしれませんが、壊れしだい新しいデザインに変わっていくんでしょうか。


公園の外周は、横須賀市が定める「1万メートルプロムナード」の一部になっているようで、簡単な銘板が街灯に埋めこまれていました。足元では海の生き物たちがお出迎え。

下町・トンボの王国

せっかくなので下町下水処理場にある「下町・トンボの王国」にも寄っていきましょう。下水処理で出た水を使用して作られたビオトープです。

1999(平成11)年の開設時に放流された三浦半島水系で生きてきた「三浦メダカ」。すいすいと泳いでいる姿が軽く覗きこんだだけでよくわかります。

お天気のせいか、残念ながらトンボは見かけませんでした。現在では法律によって下水処理された水に直接触ることができなくなってしまっているそうですが、雰囲気を楽しみながらのお散歩にはちょうど良さそうな空間。
堀ノ内駅へ戻ります
下水処理場を出たら、一路堀ノ内駅へ戻ります。次なる案内板ポイントは春日神社の先にあるキンモクセイの並木、とのこと。
春日神社

いかにも古木、な木々がお出迎えする春日神社。ブックレットにはエノキの大木がある、とあります。おそらく向かって右側の大木がそうでしょうか。枝がかなり払われてしまっていますが、もともとはかなり立派な枝振りだったことでしょう。


ふと、石垣の上に何かあるのに気づきました。

案内板ポイントには指定されていませんでしたが、オトメツバキの札が! 直射日光にさらされていなかったためか、かなり読みやすい状態で残っています。ガイドブックに載っていない案内板もあるんですね。これはがんばって探すとかなりの量になりそう……。
駅前のキンモクセイ

春日神社前から少し歩き、最後の案内板ポイントであるキンモクセイの並木までやってきました。こちらもかなり枝が払われているので、ちょっとさびしい感じになってしまっています。案内板……あるかな……

ありますね! 例の木製のやつです!

木製のやつの完全体、ようやく見つけました! こういう感じで解説が載っていたのかー! これでほくほくと堀ノ内駅に戻ることができます。よかったよかった。
まだかろうじて見つかるグリーンウォッチングヨコスカのなごり
最後の最後で、ようやくきれいに残っている案内板を見つけることができました。当時あった木がなくなってしまっていたり、道がちょっと変わっていたりと色々ありますが、今でもなかなか緑の多いコースだったように思います。
歩いてみて、この記事で見つけた以外の案内板・説明板、発見された方がいらっしゃいましたらぜひお教えください。これからほかのコースも歩いてみたいと思います!