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【金沢文庫】江戸時代の観光名所「金沢八景」の今昔・後編

「金沢八景」の景色を探す旅、後半戦に突入です!

今回のお散歩コース

金沢八景 - Google My Maps
前編: 後編: purakara.com/archives/9649 (5/10公開)

前回、金沢文庫から手子神社前の「小泉夜雨(こいずみの やう)」から、称名寺前を通過し、平潟湾沿いに「称名晩鐘(しょうみょうの ばんしょう)」「瀬戸秋月(せとの しゅうげつ)」「洲崎晴嵐(すざきの せいらん)」の風景を探しました。

今回はさらに平潟湾を回り、「乙舳帰帆(おっともの きはん)」「野島夕照(のじまの せきしょう)」「平潟落雁(ひらがたの らくがん)」「内川暮雪(うちかわのぼせつ)」の風景を探します。

乙舳帰帆

前回の洲崎公園から真っすぐ海岸線を進むと、大きな橋「帰帆(きはん)橋」が見えてきます。この橋の名前は金沢八景の「乙舳帰帆」から取られました。

横浜市金沢区にある「野島(のじま)」は元々は砂洲で陸続きとなっていた土地ですが、現在は橋で繋がった島となっています。その野島の北側の地名が「乙舳(おっとも)」です。

金沢八景の乙舳帰帆は、港へ船が帰って行く様子を描いたものです。

歌川広重『乙舳帰帆』 メトロポリタン美術館

現在、乙舳橋の上からはこんな風景が見えます。

ダイナミックに伸びるシーサイドライン!! これ、もうちょっと待ってシーサイドラインが金沢八景駅に向かう様子を映せたら、まさに「乙舳帰帆」ならぬ「乙舳帰電」になったんじゃないでしょうか。今気づきました。もっと早く気づいていれば……。

ちなみに夜になるとレールもライトアップされて更に美しい風景になるそうで、三浦半島の隠れた絶景スポットです。

野島夕照

帰帆橋から海沿いをまっすぐ行くと、また大きな橋があります。そこが「野島夕照」をモチーフとした夕照橋です。

歌川広重『野島夕照 (金沢八景)』 国立国会図書館デジタルコレクション

夕照橋は「かながわの橋100選」にも選ばれていて、灯明台を模したデザインは「橋のデザイン賞」も受賞しています。

平潟落雁

夕照橋を渡って右へ行き……。

歩道橋のある交差点を右へ少し入ります。

かかる橋は「平潟橋」。おそらくこの場所が『平潟落雁』のモチーフです。

歌川広重『平潟落雁 (金沢八景)』 国立国会図書館デジタルコレクション

落雁とは、秋になって雁の群れが舞い降りて来る様子をさす言葉で、秋の季語になっています。この記事を書いているのは3月。秋まで半年もある上に、ちょうどよく雁が平潟湾に降りて来るのを辛抱強く待つ……。想像するだけでくじけてしまいそう。カルガモはよくいるんですけどね……。

というわけで、春の平潟湾です。

画面右のこんもりした山は野島ですが、なんだか広重の絵の場所っぽくないですか!?

内川暮雪

さて、歩道橋を渡り、関東学院の前を通り過ぎて川沿いをまっすぐ行った突き当りが「内川橋」。金沢八景最後の1つ『内川暮雪』の舞台です。

歌川広重『内川暮雪』 国立国会図書館デジタルコレクション

う~ん、広重さん本当に金沢に来て描いたんですかね……。というのは、三浦半島にお住いの方はよくご存じだと思いますが、雪こんなに積もることめったにないんですよね。

「横浜が大雪でもうちの方はただの雨だよ!」みたいなことがよくあるんですよ。雪降ってくれればいいのに、ただ寒いだけですよ! ……というのは置いといて。

先ほども述べた通りこの記事を書いているのは3月。ようやく寒さが和らぎ春になった時期です。そしてこの冬、雪はついに降りませんでした……。

山里が見える『内川暮雪』の風景も、いまや工場とスポーツジムと中学校で山が隠れてしまっています。

ちょっと残念な風景ですが、これもまた時代の移り変わりですね。

プラスのぷらり

帰りは北へ真っすぐ行くと金沢八景駅、南に行くと追浜駅です。周辺には鎌倉時代の史跡が点在しています。

関東学院の小学校校舎は、源頼朝の弟である源範頼(みなものとの のりより)の別荘跡です。

金沢八景駅に向かう途中、歩道橋を左に曲がって、鎌倉に向かう道は「大道(だいどう)」といって、鎌倉時代の幹線道路でした。道沿いには源頼朝が開いた浄願寺(じょうがんじ)跡とされる遺跡や、上総広常(かずさ ひろつね)の墓所があります。

大道からは、金沢文庫駅に続く「白山道(はくさんどう)」もあり、鎌倉時代の人気武士である畠山重忠(はたけやま しげただ)ゆかりの史跡もあります。

鎌倉時代は幹線道路、江戸時代は観光名所。日本広しといえど、横浜市金沢区は2022年と2023年の大河ドラマを同時に味わえる珍しい地域ですね!
<meta charset="utf-8">樽瀬川 真人
樽瀬川 真人

三浦半島の付け根で生まれ育ち、地元の歴史を調べていたらいつのまにか鎌倉時代の三浦の海の底にいた。 

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