今回歩いたルート
30年ほど以前に行われていた、横須賀市の「グリーンウォッチングヨコスカ」という事業。そのなごりと緑たちを訪ねて歩く記事、今回は3回目です。

今回は旧軍用地がとても多かったエリア、不入斗〜公郷を歩きます。取材日は10月後半で、まだまだ木々に緑が残っていました。お天気が悪いのだけが残念な日でしたが、とりあえず歩いてみましょう!
公郷2丁目バス停〜公郷公園あたり

直前に歩いていたのが三春コースだったため、「堀ノ内」駅から移動します。「衣笠」駅ゆきのバスに乗り、「公郷2丁目」バス停で下車します。ここから公郷公園は歩いてすぐ。
宗元寺

平作川の橋げたには、なにやら曰くありげな文様が。これ、宗元寺(現在は近くに曹源寺ができています)あとから出土した瓦の模様ですね。
宗元寺は奈良時代に創建されたと考えられていて、この瓦は奈良の西安寺から出土したものと版が同じだといわれているそうです(これは2022年度の横須賀市民大学「三浦一族本貫地の考古学」で教えてもらいました)。
それだけ古いお寺があったということは、当時の郡衙(ぐんが:現在だと自治体の役所などにあたる施設)などもこのあたりだったと考えられるそう。葉山のほうから走水まで通っていたといわれている古東海道のルートも、こういった遺跡の存在を根拠に想定されているそうです。
公郷公園

橋を渡らずに右に曲がると公郷公園があります。小さな児童公園ですが、ここにグリーンウォッチングヨコスカの案内板があるはず。……でしたが、今回は見つけることができませんでした。
公郷公園を出発地点として、不入斗コースを逆向きにたどっていきます!
宇東川緑道
平作川に流れこむ宇東川は、合流地点のすぐ上流で暗渠になっています。


グリーンウォッチングヨコスカ不入斗コースは、この宇東川緑道をずっとたどっていきます。

晴れ予報なのに雨が降ったり、水道工事だったりと水難の相が出ている本日。暗渠の上を歩いているのがちょっと不安にも思えてきますが、きっと大丈夫なはず……。

雨だれがちょっとホラーな感じになっていますが、ユーモラスな子がいます。

こちらはゾウさん。

もはやグリーンウォッチングがどこへやら吹っ飛んでしまっていますが、宇東川緑道、思っていたより賑やかです。




肝心なグリーンのほうですが、緑道沿いにある住宅地のうち一部は住宅が取り壊されて裏の山がぐっと迫って見えるようになっています。急傾斜地崩壊危険区域に指定されているということもあり、もしかしたら新しく建物を建てるのが難しいのかもしれません。急傾斜地崩壊危険区域については、防災の日特集もぜひお読みください!

背後に擁壁がしっかりある土地は同じ急傾斜地崩壊危険区域でも住宅用地として引き続き使えているみたいです。とはいえ緑道沿い、家の前まで自動車が入ってこられないので少し不便かも。



椅子というのか、遊具というのか、車止めというのか、とにかく愉快な顔をした仲間たちがたくさんいるので写真をパシャパシャ撮ってしまいます。十数年に1回くらいあるであろう、これの色塗りは楽しそうです。


そうこうしているうちに宇東川公園までやってきました。現在ジャブジャブ池は感染拡大防止のため使用禁止とのこと。雨模様だったせいもあり公園内はひっそりしていました。
コースマップによるとアオギリ・ケヤキ・プラタナスなどが植わっているとのこと。少し奥にある八幡神社といっしょに樹木を楽しむエリアのようです。
不入斗公園付近

宇東川公園を出て緑道を道なりに行くと、不入斗橋バス停の近くに出てきます。不入斗橋という名称も、暗渠化以前は実際に橋があったから、なんですよね。ここで歩道橋を渡り、不入斗公園方面へ向かいます!

コースマップでは進行方向右手の歩道を歩くことになっているのですが、向かい側のほうが緑道っぽくていい感じがします。あれれ?



あれあれ、いいなーと言っていたら、歩いているほうの道もいい感じの緑道が始まりました。不入斗公園です!

ブックレットによるとこのメインアリーナの前にカナリーヤシが植わっていて、そこに案内板もあるとのことだったのですが……見当たりません。残念ながらなくなってしまったようです。

しかし少し奥に進んだところに、何かいます!

先日の大津コースとどっこいどっこいの読めなさですが、地図上にコースが描かれているのがわかる状態で案内板が残っていました!
しかしこの場所、身長160cmのわたしが背伸びしてもよく読めないくらい高いです。なんとなく残ってはいるものの、人に見せるという意図はもう失われてしまっていますね。



不入斗公園一帯はもともと軍用地。陸軍の重砲兵連隊演習場などがありました。旧軍の施設は敗戦後「旧軍港市転換法」にもとづいて積極的に平和利用されていきます。旧軍の痕跡を残していこうという最近の流れとは真反対の、できるだけ戦争を思い出させるものをなくし、新しい都市の形を作っていこうとする思想があったんですねえ。

これまでグリーンウォッチングヨコスカの情報が残っていることが比較的多かった児童公園。しかし残念ながらこちらには案内板が見当たりませんでした。先に進みましょう。

少し脇道にそれたところに西来寺というお寺があります。ここにはカシワの木の案内板があるそうですが……?


かなり薄れてしまっていますがありましたー! 木も立派に残っていてよかったよかった。グリーンウォッチングヨコスカの案内板、ないところには全然ないですが、コースの中でひとつも残っていない、という感じでもありません。なんとか雰囲気をたどることができています。
不入斗中学校方面へ

グリーンウォッチングヨコスカのリーフレットには気になる文言があります。
不入斗中学校ぞいにはヤマモモの並木があり、夏になると赤むらさきの実を食べに小鳥たちが集まってきます。もちろん人間も食べられます。
「もちろん人間も食べられます」、ぼうっとして読むと人間が何かに食べられちゃうみたいですが違いますよね。ヤマモモの実は人間が食べてもおいしい、ということだと思います。
前回の大津コースでも感じたことですが、どうもグリーンウォッチングヨコスカは人間に木の実を食べてもらいたがりがちなんです。

これがいったいどういうことなのかよくわかりませんが、そうかそうかヤマモモは食べられるのか、と思いながら歩きます。



やはり「食べられます」な案内板。とにかく食べてほしいらしい。

グリーンウォッチングヨコスカの案内板もありました! 文言はいっしょですね。デザインもよく似ています。さっき見かけた茶色い案内板のほうが新しく見えるので、グリーンウォッチングヨコスカで作ったデータを再利用しているんだと思われます。
ちなみに、このへんの児童・生徒のみなさんはヤマモモの実を食べて育ったりするんでしょうか。昔に比べると樹高がかなりあって手が届かなそうなので、今ではもいで食べるのは難しいんでしょうか。気になります。
坂本公園へ
聖佳幼稚園・桜小学校のまわりをぐるっと回って、終点の坂本公園へ向かいます。この道、実は真夏に特集記事の取材に同行したとき、筆者の吉川さんと歩きました。あの時は暑かったなー……と秋の雨に濡れながら考えます。

坂本公園までやってきました。おや、だんだん見慣れてきた形状の案内板が。

これは新しい! 読めなくなってしまったグリーンウォッチングヨコスカの案内板の上から、「景観重要樹木」の案内が貼ってあります。こういう再利用のしかたもあるのか……!

指定の詳細によると坂本公園のヤエザクラは12本。満開時は壮観でしょうね! 春も見に来たいなあ。

坂本公園も旧軍用地だった場所。ところどころに古い擁壁のあと、のようなものが残ります。

コースマップによるとクヌギの木の案内板があるそうなのですが……。残念ながら見つけられませんでした。ただ、坂本公園には樹木園があって伸び伸びと育った木々の間を歩けます。グリーンウォッチングとしての目的は十分達成!


児童公園には遊具も。最近の滑り台は勢い余って子どもが転がり落ちることがないように、ずいぶんと工夫された形状をしているんですねえ。
さて、コースを逆再生するグリーンウォッチングヨコスカ・不入斗コースはこれにて終了です! 秋よりは、ヤマモモの実がなる初夏、もしくは花が多い春のほうが楽しいかもしれないコースでしたが、まあまあそれなりにグリーンウォッチングヨコスカ制定時の様子をたどりながら歩けたんじゃないかな、と思います。
次回のグリーンウォッチングヨコスカは衣笠コースを歩く予定です。おたのしみに。