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【津久井浜】西と東の間には何がある?

西と東の境目

横須賀市は行政センターの管轄に基づくエリアわけがあります。本庁・追浜・田浦・逸見・衣笠・大津・浦賀・久里浜・北下浦、そして西。ほかのエリアの名前が地名からとられているのに対し、最後の「西」だけずいぶんざっくりです。

「西」があるなら「東」だってあっても良さそうなものなんですが、行政センターの管轄としては存在しないんですよね。では、あえて「東」を作ってみるとどのあたりになるんでしょう。地図を見てみましょう。

地理院地図に描画

西エリアの南半分、おおよその範囲を黄色で囲ってみました。西という名称ではありますが、横須賀の南端までがエリアに含まれています。そこで、対応する「東」エリアは同様に南端を三浦市に接する北下浦・久里浜・衣笠・大津・浦賀あたり。かなり広い範囲になりそうです。こうやって西と東を突き合わせてみると、「西」という区分けがだいぶ大まかであることが実感できます。

「長井」「武山」「大楠」などという地名・旧村町名からとったエリアではなく、全部まとめて「西」と呼ぶ。西には何かすごく「西」っぽさがあるのでしょうか。西と東の境目は、そんなにすっぱり分かれるものなんでしょうか。気になったので、西と東の境目に何があるのか探しにいくことにしました。

今回歩いたルート

津久井浜_西と東の境目 - Google My Maps
津久井浜_西と東の境目

西エリアはほかのエリアと境目を接する面積が広いので、西と東の境目を探せるポイントはたくさんあります。その中でまずは横須賀市が東西にいちばん細いあたり、津久井(東側)と須軽谷(西側)を通って横断してみることにしました。

「津久井浜」駅から歩きます

「津久井浜」駅を出発して西と東の境目に向かいます。途中までは津久井川沿いに整備された遊歩道を歩きました。

神社か駅か

京急「津久井浜」駅

津久井浜駅に来るといつも「神社なのか駅なのかわかんないな……」と思います。近代まで富士講が盛んだったこの地域。富士講は文字通り富士山を信仰する集まりですが、民間信仰に端を発し、いわゆる「神道」ともまたひと味違うものなのだそうです。とはいいつつ三浦富士には浅間神社が祀ってあり、ふもとのこの場所にも別宮があるというわけです。

浅間神社も富士山信仰にかかわりの深い神社で、各地域にある小高い丘やもとは古墳だったような塚などによく祀られています。富士山が遠いので三浦富士に浅間神社を祀り、三浦富士が遠いのでこの場所に別宮がある。2段階リモート参拝っていうことですね。

トイレに寄っていきましょう

ここから武山へと登る人も多い津久井浜駅、駅の外に公衆トイレが用意されています。準備ができたら高架をくぐって線路の北側へ。

津久井川遊歩道を北上

津久井川です

道なりに歩いていくとしばらくして津久井川とぶつかります。ここから先は川沿いの遊歩道を進みます! 例によって向かって左側の遊歩道は途中で行き止まりになってしまうので、対岸の道を行きます。

河川敷レベル高め

三浦半島にある川沿いの遊歩道は畑地を通っていくものが多いのです。ここもご多分に漏れずなのですが、草の生い茂り方がけっこうすごい……! 真夏は通りにくいかもしれません。

谷間を行く

遊歩道は左岸になったりまた川を渡ったりしながら続いていきます。

右から三浦富士、砲台山、左に見切れているのが武山

山が近くなってきました。

うすくなってしまっていますが「津久井浜観光農園」の案内板です
みかん! いちご!

しばらく川をさかのぼると広大な観光農園、「津久井浜観光農園」にたどり着きました。敷地のわきを進みます。春はいちご狩り、冬はみかん狩り。梅雨の季節はとくになにもないのかなと思いきや、お芋掘りなどができるそうです。

観光農園 | JAよこすか葉山
神奈川県の南東部に位置する三浦半島。四季折々に変化に富んだ美しい海岸線と、安らぎを感じさせる緑がいっぱいです。JAよこすか葉山は横須賀市、葉山町、逗子市を管内とする農業協同組合です。
ここは草が茂ってみかんが見えなくなってしまいました

津久井川のせせらぎ広場

ちょっと川の様子が変わりました

農園と川に挟まれたまましばらく歩くと、川の雰囲気が変わりました。

吊り橋だ!

小さいけれどもしっかりとぐわんぐわんたわむ吊り橋を渡ると……

流れまで下りられます

水遊びができる親水ゾーン、「せせらぎ広場」があります。

東屋とちょっとした広場も

水道があるので、遊んだあと簡単に手足や道具を洗って帰ることができます。

ここからの登山道は「オレンジルート」というみたいです

案内図で今いる場所を確認。このまま地図右下の一騎塚方面へと歩いていこうと思います。

きらきら光る風見

鏡面に周囲の風景が映り込む、おもしろい形の風見がありました。風に吹かれてぐるぐる、ぱたぱた、きらきら。見飽きない不規則な動きが楽しかったです。

上流の津久井川は細い水路です

上流の津久井川は細い水路になって谷底を流れています。近くを歩く道がないのでここでお別れして、ここから先は公道を行こうと思います!

せせらぎ広場からは三浦一族のうち津久井氏ゆかりの地も近く。ちょこっと足を伸ばしてどうぞ!

峠道を上る

津久井公園

道沿いの津久井公園にも公衆トイレがありました。チェックチェック。

上り坂が続きます

津久井公園を通りすぎるとすぐに上り坂が始まります。ずっと続く坂道。

眺めはめっちゃ良い!

房総まで望めるいいお天気です。だいぶ登ってきたなあ……と今さらですが、西と東の境目ってもしかして、いやもしかしなくても、峠があるんじゃないでしょうか。

いやこれ絶対峠だって

地図上ではだいぶ境目に近づいてきました。

だいたい赤丸の位置にいます

境目へ到達!

境目に着いた!西(横須賀市須軽谷)方面。

境目に到達しました! その先に広がる平坦な道。やっぱり東西の境目は峠だったみたいです。

今来た道を振り返る。東(横須賀市津久井)方面。

西と東の間には

なるほど、峠が古くから地域の境目になっていたんだな。納得納得。と、そう思ったのですが……。

???「やあ」

今いる場所(十字カーソルが当たっているポイントです)を地図で見てみました。あれ、なんか引っかかるぞ……

あれ? 出典:地理院地図
んんん? 出典:地理院地図
三浦市「やあ」 (地理院地図に描画)

まさかのまさか、「横須賀市の西と東」の間に横たわっているものは「三浦市初声町の先っぽ」でした。そんなことある?

西と東の境目(三浦市初声町)から武山、砲台山、三浦富士を眺める

横須賀市の中にある境目を探しにいったはずが、なんとたどり着いたのは三浦市でした。びっくりしたー。ある程度急な峠道で地域がわかれているわけですが、それは東西だけでなく南北も同じだったんですね。今歩いている道は昔から東西南北、どの地域の人もみんなが共有する道だったみたいです。

第一軍管区地方2万分1迅速測図原図(出典:農研機構

明治初期に作られた「迅速地図」でも津久井・須軽谷・三浦市初声町がぶつかる道が確認できました。

武山のほうに向かう道も、東西の境目

それともうひとつ。今回歩いた道ではありませんが、茶色のプレハブ小屋から武山のほうへ伸びている道、ここはきちんと須軽谷(西)と津久井(東)の境目になっていました。

答え合わせ

そんなわけで、須軽谷〜津久井浜間を歩いてみての答え合わせです。

疑問1:西には何かすごく「西」っぽさがあるのでしょうか。 答:西と東の境目あたりは高台で、一面に畑が広がっている。雰囲気は東西で変わるのではなく標高で変わる。

疑問2:西と東の境目は、そんなにすっぱり分かれるものなんでしょうか。 答:境目は道路上にあるのでわかりにくいが、峠をひとつ越えるのでそこで分かれると言える。ただし、本当に境目の役割を果たしているのは三浦市の土地だった。

おまけ:帰るついでに「一騎塚」まで歩きます

ちょっとびっくりはしましたが、無事横須賀市の西と東が分かれる場所を見つけました。それでは帰りましょう……! と言いたいところですが、同じ道を通るのもつまらないのでこのまままっすぐ進んでみます。目的地はバス停がある「一騎塚」です。

猟銃禁止区域

狩猟関係の掲示物って、独特なフォントをしていますよね。

これは以前に茨城県で撮ったもの

都道府県が違っても基本的なフォントや構成が同じにできています。統一することで一目でわかるようにし、事故を減らす狙いがあるんでしょうか。

ちょっと登ったり、しっかり下ったりしながら「横須賀市西公園」のそばまで来ました。ここも「西」なんですね。田んぼに1枚だけ水が張ってあるなあ、と思いながら通りすぎます。

姫様のたまご

食べるのに覚悟が要りそうなたまごの直売所。

いい感じの埋もれ具合

自衛隊官舎の敷地内には、滑り台・雲梯・ジャングルジム・シーソー・ブランコと基本の遊具セットがしっかり揃った公園が丸ごと夏草に埋もれていました。

一騎塚

そうこうしているうちに一騎塚に着きました! 一騎塚については以前の記事をぜひ。小高い丘をついでに歩いてみるのもおすすめです。わたしはすぐそばのバス停から、「横須賀中央」駅方面のバスに乗って帰ります!

赤星友香
赤星友香

横須賀ぷらから通信主宰。クロシェター / ライター。普段はpiggiesagogoという屋号で編み図を作ったり、別館1617という自主レーベルで本を作ったりしています。横須賀育ちの北関東在住で、わりとつねに三浦半島に行く口実を探しています。

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