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【浦賀】音楽プレイリストで歩く横須賀③千代ヶ崎と燈明堂海岸

Apple Musicで個人的に作って公開している「横須賀 ヨコスカ YOKOSUKA」という名前のプレイリスト。

タイトルや歌詞に「横須賀」もしくは横須賀市内の地名が明記されているもの、またアーティスト本人等が横須賀についての楽曲であることを明言しているものを集めて、基本的にリリース順で並べています。『横須賀ストーリー』のようにたくさんのアーティストがカバーしているものは、基本的にオリジナルのもののみ入れています。

今回もこのプレイリストの中から数曲をピックアップしてお散歩ルートを組んでみたいと思います。これまでの記事はこちらからどうぞ。

今回歩いたルート

【浦賀】音楽プレイリストで歩く横須賀③千代ヶ崎と燈明堂海岸 - Google My Maps
記事URL: (12月6日公開予定)

今回は西浦賀にある千代ヶ崎砲台跡を基点に、浦賀の海沿いを歩きます。千代ヶ崎は駅から遠いところにあるので、行きは「京急久里浜」駅からバスに乗車。帰りは「浦賀」駅まで徒歩で移動します。

千代ヶ崎砲台跡に行きたい

現在は週末と祝日のみ公開されている千代ヶ崎砲台跡。19世紀の終わりに造られ、戦後は長らく自衛隊施設として使用されていました。つい最近になって一般公開が始まり、2023年現在は「千代ヶ崎砲台跡活用サポーターの会」というボランティアの皆さんが敷地内を案内してくださいます。季節によって公開時間が異なりますので、お出かけの際は事前に横須賀市やサポーターの会のウェブサイトをご確認ください。

東京湾要塞跡(千代ヶ崎砲台跡)
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さて、この千代ヶ崎砲台跡、意外と存在が知られていないのです。わたしは2023年の9月に個人的に遊びに行ったのですが、京急久里浜駅からタクシーに乗ったところおもしろい事態に遭遇しました。

「千代ヶ崎砲台跡までお願いします」と言ったのですが「千代ヶ崎方面まで」と勘違いされて、タクシーは「千代ヶ崎」バス停に行ってしまったんです。そこから砲台のことを説明して再度連れて行っていただいたのですが、どうやら訪れるのは初めてだったよう。「とりあえず燈明堂のほうに行ってください!」と説明して事無きを得ました(燈明堂についてはまたのちほど)。

タクシーの運転手さんですらこういう感じですから、事前情報が少ない状態で訪れるのはちょっと難しそうです。自家用車の場合は近くの駐車場に止められるのですが、公共交通機関だとどうなるか、不安になるかも。というわけで今回は行き方もしっかり予習することにします。まず久里浜からバスに乗るところから始めましょう!

Dj L-Spade “Kurihama (feat. Ettoman)”

京急久里浜に着いたら、東口のバスロータリーでバスに乗ります。Dj L-Spadeの『Kurihama (feat. Ettoman)』(2021年)という楽曲からプレイリストを開始。聞いてみるとわかるのですが、どうも駅前の音が長尺でサンプリング(もしくは再現)されている模様。ふむふむと思いつつちょっと笑ってしまいながらバスを待ちます。

バスは2番乗り場

2番乗り場にはいろいろな系統のバスが来ますが、次のバス停が「夫婦橋」の系統に乗ってください。つまり久9・19・29系統ですね。本当は久19の「燈明堂入口」が最も近いバス停なのですが、久9の場合は「千代ヶ崎」、久19の場合は「長瀬三丁目」、久29の場合は「長瀬二丁目」のバス停で下車します。なんでこんなことになるのかは後ほど説明します!

仲井戸麗市『One Nite Blues」』

しばらくバスに揺られた後、今回は「千代ヶ崎」バス停で下車しました。ここが以前タクシーに間違えて連れて来られてしまった場所。久9系統の終点です。

突き当たりの手前から港湾になっていて、一般の人は立ち入りができません。左手には久里浜刑務所と少年院があり、バスは敷地内でUターンして戻っていきます。こちらで次の曲をポチ。

仲井戸麗市の「One Nite Blues」(1988年)です。Apple Musicだと「One night blues」という表記になっているのですが、たぶん「nite」のほうが正式なんだと思います。

仲井戸麗市はCHABOさんと呼んだほうが思い当たる方も多いかも。RCサクセションに在籍していたこともあるギタリストです。その仲井戸の初となるソロアルバムに収録されているこの楽曲、久里浜少年院を脱走したい(もしくはしようとしている?)少年の心情を歌った楽曲。

公道から見える場所には法務省の官舎が立ち並んでいます。取材当日(2023年11月)はあまりお天気に恵まれなかったので、寒々しい印象がちょっと増してしまいました。ギターソロの凄みが響き渡る港の道。

出典:地理院地図

地図をご覧いただくとよくわかるのですが、今いるあたりは埋め立て地です。バス通りは古い地形に沿って伸びているので、千代ヶ崎バス停で降りると少し遠回りになってしまうんですね。というわけでもとの道までてくてく戻ります。

余談になりますが、今いるあたり(横須賀市長瀬)は広範囲が土砂災害(特別)警戒区域に指定されています。久里浜刑務所・少年院の近くには土石流の警戒区域もあります。山と海に挟まれた地形がしみじみと実感されます。

「長瀬三丁目」バス停

元の通りに合流する手前のところに久19系統だけが止まる「長瀬三丁目」バス停があります。「千代ヶ崎」の次の停留所です。

ちなみに久29系統はどうかというと、「千代ヶ崎」バス停のひとつ手前、「長瀬二丁目」バス停が終点です。久9系統と同様、終点まで来たバスはすぐ近くの久里浜営業所に戻っていってしまいます。京急久里浜駅のところで各系統によって降りる停留所が違うと書いたのはこういった事情のため。ちょっとややこしい場所なんです。砲台跡に一番近い「燈明堂入口」バス停はまた後ほどご案内しますね。

千代ヶ崎砲台跡へ

うっすらと見える「ようこそ」の場所は消防訓練センターです

さて、バスを降りた後がまたちょっと大変なのですが、千代ヶ崎砲台跡まで行ってみましょう! 交差点を右に曲がると見えるトンネルのほうへ進みます。目の前に見える川間隧道ずいどうではなく、右手の坂道を進みます。

ゆるゆると坂道を上ると、川間隧道よりも高い場所により古い長瀬隧道があります。こっちのほうが若干近道なんです。

トンネルを抜けたらそのまま今度は坂を下ります。

突き当たりに千代ヶ崎砲台跡と燈明堂の案内が出てきました。矢印に従って進みます。

しばらく歩くと坂道の途中でY字路になります。左手の下り坂を選ぶと燈明堂。右手の坂道を選ぶと千代ヶ崎砲台跡に行けます。

2023年9月撮影

取材日は平日だったので千代ヶ崎砲台跡の敷地内には入っていません。なので別の日の写真をご紹介。Y字路の先はずっとかなり急な坂道が続きます。暑い季節に来るとまずこれがけっこう大変。

坂を上りきるといかめしい石積みの切り通しが待っています。ここから先が千代ヶ崎砲台。平日は切り通しの奥にある門が閉まっています。

写真はちょろっとだけご紹介。入場が無料の施設なので、ぜひご都合つくときに足をお運びいただければと思います。ボランティアガイドさんにいろいろ質問しながら歩けて、とても勉強になるしおもしろいです!

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MASAToooN!『YOKOSUKA』

さて、千代ヶ崎砲台跡は防衛拠点なだけあって高いところにあり、とても眺めが良いのです。浦賀水道を一望できるといってもいいくらい。良い景色を前に、次の曲を再生しましょう!

ギタリストMASAToooN! の『YOKOSUKA』です。初出は2019年のEP「Hometown」だったかと思うのですが、現在そちらのバージョンは配信で聞けなくなっています。そのかわり新しい録音のものが配信されています。

この新しいバージョン、サムネイルがまさに千代ヶ崎砲台内の写真なんです。楽曲は千代ヶ崎砲台のボランティアセンターで終日流れていて、もはや千代ヶ崎砲台のテーマソングといっても過言ではないほどです。ぜひ現地でも聞いてみてくださいね。

さて、高台から海を眺めるのもいいのですが、もうちょっと近づいてみたくなるのが人情というもの。しかし千代ヶ崎砲台から直接海辺に下りることはできません。バス停から歩いてきた道も海が見えると言いがたいのは今までお読みいただいた通りです。さてどうしよう? というところで、先ほどからちょこちょこ名前だけ出てきたアイツのほうへ行ってみましょう。燈明堂です!

燈明堂海岸

坂道をえっちらおっちらと下って先ほどのY字路まで戻ります。そして「燈明堂」の案内に従って歩きましょう。ちなみに読み方は「燈明堂とうみょうどう」です。

歩いていると向こうのほうに海が見えます。

下りきって少し上ると、左手に「燈明堂跡」という看板がある広場が出てきます。ここから先は海です!

道の端から見える海

燈明堂海岸には有料駐車場があるので、車でおいでの場合はこちらに止めます。

海沿いにある小高い丘は公園になっています。園路を進むと……

岬の先端に巨大な灯籠のようなものが。こちらが燈明堂です。

燈明堂は江戸時代に造られた、当時の灯台。灯台にしては小さいな、と今となっては思いますが、当時の海運事情ではこのくらいのもので十分だったんですね。

園路を外れるとすぐに海岸線です。基本的に岩礁が多めですが……

砂浜もあります! 浦賀港の入り口に当たるこの場所、たまに少し大きめの波が打ち寄せてきます。

奥には古そうな石垣が。この石垣から向こうは埋め立て地です。

北島三郎『東京湾』

さて、こちらで一曲。北島三郎の『東京湾』(2012年)です。東京湾周辺の情景を巡る歌詞のトップバッターは浦賀水道。先ほど「浦賀港の入り口」と書きましたが、久里浜〜浦賀は東京湾の入り口でもあります。この入り口を安全に通るための航路が浦賀水道。名称はおそらく、江戸時代の船舶取り締まりを浦賀奉行が担当したことから来ているのでしょう。

首切り場?

さて、浦賀奉行所と燈明堂にまつわるちょっと不思議な伝承があります。それはこの場所が「浦賀奉行所の首切り場だった」というもの。「浦賀探訪くらぶ」による立て札にもそういった内容が掲載されています。ただ、ここが本当に首切り場だったのだと断言できる史料はどうやら存在しないようなんです。

たしかに供養塔は建っているのですが

『浦賀奉行史』という書籍によると、浦賀奉行所は1822年(文政5年)の時点で入れ墨より重い処罰を独自に下すことができなかった、とあります1。入れ墨は町中で前科者を判別するために入れるものでしたから、もちろん死刑よりは軽い刑です。

国立国会図書館デジタルコレクション

少なくとも1822年当時は浦賀奉行所が独自で死刑判決を下すことができなかった……となると、このあたりで死刑相当にあたる罪を犯した人はもっと格上の奉行所があるところまで行って裁かれたのかもしれません。

燈明堂海岸が首切り場だったかどうかはいったん置いておいても、この場所に何かしらの来歴があることは間違いないようです。写真の案内板には燈明堂周辺から幕末に人骨が掘り出されたことがあることが説明されています。また、伝承によるとこの海岸からは泣き叫ぶ声が聞こえることがある、とも言われています。こういった要素が積み重なって首切り場という物語が生まれたのかもしれません。

ちなみに、海沿いの岩礁地帯で泣き叫ぶ声が聞こえる、という言い伝えがあるのはそう珍しいことではありません。三浦半島では三浦市にある浜諸磯にも似たような伝承が残されています。もしかしたら風の音をそう聞いたのかもしれないし、音にまつわるある種の信仰が昔は存在していたのかもしれませんね。

燈明堂海岸を南下

燈明堂北岸は見たので、次は南側に行ってみましょう。こちらの砂浜はちょうど千代ヶ崎砲台の真下あたりです。

有料駐車場の前の道を歩いていくと、波打ち際に降りられる階段があります。

岩肌がかっこいい

階段を下りてすぐは岩場ばかりですが、少し歩くと砂浜が現れます。このときは満潮から30分ほど過ぎた時刻でした。干潮時なら岩場の回りにもう少し砂浜が出てくると思います。逆に言うと満潮時でも歩ける場所があるので、どの時間帯に行ってもそこまで歩くのに困ることはなさそう。

穴場感のあるビーチ

砂浜を進み、今回はここまで歩いて引き返しました。もう一度岩場に登れば、もう少し先まで歩けると思います。写真奥に見える岬のような岩場まで犬とお散歩している人もいました!

浦賀駅へ

千代ヶ崎砲台跡ではちょっと物足りなかった海辺感を満喫したところで、浦賀駅へ移動しようと思います。来た道を戻り、長瀬隧道のほうへ曲がらずにそのまま直進します。

川間隧道を出てすぐのところに道が合流します

この壁画がある場所のすぐそばに、久19系統のバス停「燈明堂入口」があります。千代ヶ崎砲台に一番距離が近いバス停です。たくさん歩くのが嫌な方は久里浜で久19系統が来るのを待つのが吉と思います!

これは「陸軍桟橋」

と、言いつつわたしはバス通りを浦賀駅までてくてく歩きます。歩いたルートはバスの路線と全く一緒。バスに乗りながらも同じ景色を楽しむことができます! しばらく歩くと浦賀港の水際に近づいてきます。

昔は造船所があった浦賀港。当時造船所に占有されていた水辺が開放され、遊歩道になっています。このあたりは以前「吉井の御林」を歩いた帰りにも通りました。

クレイジーケンバンド『ヨコスカンショック』

造船所があったころは潜水艦がぷかりと浮いていたこともある浦賀港。という思い出話をしたところで、次の曲をかけてみましょう!

横須賀プレイリストでは毎度おなじみのクレイジーケンバンドによる『ヨコスカンショック』(2005年)です。この曲で浦賀水道にヌルッと進入する「国籍不明の潜水艦」は非実在ですが、聞くたびに浦賀港の在りし日の姿をなんとなく思い出してしまうんですよね。

細長い浦賀港の入口を振り返る

当時は当時で趣がありましたが、現在の姿も好きです。好きなように海岸線に近寄ることができるって素晴らしいことだと思います。

mach25『WAVE ON RHYTHM』

道なりに歩いていくと浦賀駅に到着します。ここで最後の曲!

mach25の『WAVE ON RHYTHM』(2002年)です。改名前の「麻波25」のほうがなじみがある方も多いかも。横須賀出身のミクスチャーバンドで、地元に言及した楽曲がいくつもあります。この曲では京急の終点として浦賀駅が登場。歌詞中では終点ですが、本日はこれから電車に乗って帰ります。史跡と海と音楽を楽しめるルート、お付き合いいただきましてありがとうございました!

本日のプレイリスト

Apple Musicは有料サービスです。Spotifyは会員登録のみで無料利用ができますが、プレイリストやアルバムはシャッフル再生しかできません(曲順での再生は有料会員のみ可能です)。Youtube Musicはスマートフォンではアプリとログインが必要ですが、ブラウザ版ではログインなしで利用することができます。YouTubeと同様、広告が入りますが無料で利用できます。

Apple Music

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赤星友香
赤星友香

横須賀ぷらから通信主宰。クロシェター / ライター。普段はpiggiesagogoという屋号で編み図を作ったり、別館1617という自主レーベルで本を作ったりしています。横須賀育ちの北関東在住で、わりとつねに三浦半島に行く口実を探しています。

  1. 高橋恭一 著『浦賀奉行史』,名著出版,1974. 国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2023-12-05)
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