今回歩いたルート
これまでいくつか歩いてきた「グリーンウォッチングヨコスカ」。横須賀市で30年ほど前に行われていた散策コース選定事業です。
今回は1989年に発行された2冊目のブックレットから、「長井コース」を歩きます。この2冊目のブックレットはとくに花の豊かなコースを選んだそう。秋冬に歩くにはあまり向いていなさそうに思えますが、さてさてどうなるでしょうか。

富浦公園

長井コースのスタート地点は「富浦公園」。自衛隊の武山駐屯地南側に隣接する公園です。
最寄りのバス停は「富浦」ですが、本数があまり多くありません。取材時は武山コースのあとに歩いたので、林方面から「三崎口」駅ゆきのバスに乗りバス停「長井」で下車しました。

富浦公園といえば、少し前に「大蔵省専売局中央研究所長井分室」の遺構があるということが知られて話題になりました。

ちょっと覗いてみたかったのですが……

工事中とのことで北側への通り抜けができませんでした(2022年11月現在)。写真左手奥のほうにあるはずなんですよね。残念。

遺構のほうには行けないものの、南側の浜には下りられたのでしばしぼんやり。こっちの海岸は西向きなんだよなあ、と思っていたのが見事ゴール地点で報われるかたちになりました。

さて、見通しのいい芝生広場がある富浦公園。どこぞにグリーンウォッチングヨコスカのなごりはないかなと見渡してみました。

おそらく植物の紹介板として使われていた、盤面が細長いタイプの木製案内です。富浦公園には横須賀市の花であるハマユウがあるということなので、そのあたりの植物を紹介していたのでしょうか。そのほか、グリーンウォッチングヨコスカ激推しのヤマモモやケヤキなどが植わっているとのことでした。


富浦公園を一歩出ると、道路との間にはお堀のような川が流れています。「終戦直後の横須賀市における旧軍用財産の転用計画について」という論文によると、太平洋戦争時の富浦公園の敷地は武山海兵団長井分団の一部だったように見えます1。軍用地だったとしたら本当にお堀の役割を果たしていたのかもしれませんねえ。
旧道を歩く

先ほど「長井」バス停を下りて歩いてきた道を逆に戻っていきます。

ブックレットによると、ここから先しばらく歩く道は旧道なのだそう。何か古いものが見つかるかな、ときょろきょろ。

荒井観音への道標

「荒井観音への道標」と書かれた案内を見つけました。この案内の足元にあるのがそうですね。
「江戸時代の観音めぐりの隆盛を知る石造物。」と書かれています。石造物が知っている、覚えている、っていうニュアンスがいいなあ。人間なんて数十年でいなくなっちゃいますけど、この石はずっと何百年もここにいて毎日往来を眺めているんですもんね。

写真を撮っていたら、近所の子と思われる小学生に「なんで写真撮ってんのー?」と聞かれました。なんで撮ってんだろうねえ。年取ればわかるかもしれないねえ。

長井小学校・中学校方面へ

以前白畑さんが歩いていた長井小学校・中学校方面へとコースは進みます。



このジョギングコースはグリーンウォッチングヨコスカとは別の道、自衛隊の敷地のまわりをぐるりとまわりながらソレイユの丘方面へと向かうようです。しかしちょっと車通りが多いですが、ゆっくりジョギングできるようなコースなんでしょうか。気になるので歩いてみたいです。

かなり古そうな大谷石の門を見かけました。このあたりは海軍砲術学校長井分校の敷地だったはず。そのころのものでしょうか。
長井の坂を下る
長井小学校のまわりをぐるりと歩き、坂道を下っていきます。この坂、ぷらからのヘッダーになっているんですよ。


イラストのもとになった時期と比べると、少し緑がすっきりしてしまいました。それは残念なのですが、この道を歩けて満足です。
「かまくらと三浦半島の古木・名木50選」

紅葉したらさぞ見事だろうな、と思われるイチョウが植わっている長徳寺の前を通ります(取材は2022年11月上旬でした)。
コースマップを見るかぎり、長井コースにはあまり案内板がなさそうなんです。なのであまり期待せずに覗いてみたところ……

グリーンウォッチングヨコスカではない、別のものの案内板がありました! インターネットに公式のウェブページはなさそうなのですが、なんとどなたかがGoogleマイマップを作っていらっしゃいます。すごいなあ。
なくなってしまった木がいくつかあるようですが、現存するものをめぐってみるのだけでも楽しそうです。


ブックレットには「長徳寺からは、田や畑が見られるのどかな風景の中を歩きます」と書かれています。歳月が経ったのを感じるのはこういうとき。今では道沿いにはたくさん住宅が建ち並び、高台に向かうまで畑は見当たりません。昔はこのあたりが田んぼだったのかなあ。


キャベツや大根がすくすくと育っている中を進みます。だいぶ日が傾いてきました、がんばれがんばれ。
おこり石

歩きながらGoogleマップを眺めていたら、「おこり石」という何やらおもしろそうなものがあるみたいだったので寄り道をしてみました。

石と石のすきまに吹く風の音が、怒っているように聞こえるのでしょうか。石自体は自然石なのだそうですが、どうしてこの場所にふたつ重ねて置くようになったんでしょう。この石たちに何があったんだろうなあ。

海沿いを進む

漆山湾沿いに出ました。だいぶ日が落ちてきているぞ、急げ急げ。それはそうと、このあたりは道沿いにたくさん寺社が集まっています。昔から人が住んでいたエリアなんでしょうね。ブックレットによると春から夏にかけてはいろいろな花が見られるとのこと。

11月ともなると見られる花はかなり減ってきています。だからというわけでもないのですが、夕日が美しい海の写真をぱしゃぱしゃ撮って進みます。



「関東ふれあいの道」は関東の一都六県をぐるりと周遊できるコースなんだそうです。神奈川県のコースは三浦市から始まって三浦半島の西側を通り、鎌倉から大磯、そして丹沢方面へと抜けていきます。

三浦半島だけで4コース。これはそのうち歩いてみたいですよねえ。

ほかの散策コースに思いを馳せていると、ようやくゴールが見えてきました。荒崎公園です!

グリーンウォッチングヨコスカ長井コースの数少ない案内板がここにもあるはず。どこでしょう?


先日の衣笠コースも通れない場所が多々ありましたが、荒崎公園も園路が一部通行止めなんだそうです。横須賀市の公園、ちょっと大変ですね……

グリーンウォッチングヨコスカの案内板はかろうじて、といった風情ですが残っていました。こちらは幅広の金属板が付いているので、コースマップが描かれていたのかもしれません。あった場所は園内に入ってすぐの広場です。
荒崎公園ではイソギクなどの海岸植物の花が楽しめる、とブックレットには書いてあります。景勝地として知られる荒崎公園、園内を歩いた記事は樽瀬川さんが書いてくださっています。併せてご覧くださいね。
せっかくだから日没を見て帰りましょう

そろそろ日が沈みそう。11月、花はないが空気は澄んでいます。せっかくなので夕日を眺めてから帰ることにしました。




風もなく穏やかな夕暮れ、伊豆のお山に沈んでいく太陽をじっくりと眺めることができました。贅沢ですね。花がメインのコースは秋冬に楽しめないのか……? というとそんなわけもなく、どんな季節でも楽しみかたを見つけられるのがぶらぶら歩きのいいところだなあと思ったり。
荒崎公園最寄りのバス停は「荒崎」です。来た道を少し戻っていくと見つかります。そちらから三崎口駅方面へと帰りましょう。しかし今日歩いたエリア、全部住所は「横須賀市長井」です。長井、広いですねー。
これまで何コースか歩いてきたグリーンウォッチングヨコスカですが、今回の長井コースでいったんおしまいにしようと思います。コース自体はまだまだたくさんあります! ご興味のある方は、ぜひ横須賀市立図書館でブックレットを確認しつつお出かけしてみてくださいね。