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【北久里浜】古東海道だったらいいな。丘陵部に残った直線鞍部を探す

土地の高低差がおもしろいくらいに分かる「カシミール3D スーパー地形セット」というアプリを眺めていたら、気になるところを見つけました。丘陵部に対して直角に切り込むように横切っている溝のような地形です。おそらく道なのかな?

出典:カシミール3D スーパー地形セット ちょうど十時カーソルが当たっているところに道らしきものが。

この道一本だけなら三浦半島でよく見かける地形ですね、で終わりかもしれません。でも周囲を見渡してみると、ほかにも直線上に周囲よりも傾斜がゆるやかな斜面がいくつか見受けられることに気づきました。

出典:カシミール3D スーパー地形セット 気になる傾斜として白矢印を追記しました。

これはおもしろいかも。というのは、古代の道路がこのような形をしている可能性があるからです。三浦半島の古代道路といえば、古東海道です。

※ といいつつ、この先の内容は「だったらいいな」の妄想記事であることをご留意ください。このような地形はそもそも古代道路ではなく、活断層の活動の結果生まれたものである可能性も高いです。一方で実際に道として現在でも使われている場所もあるので想像が膨らむところ。あくまでも「だったらいいな」のスタンスでお楽しみください!

古東海道とは

古東海道とは、8世紀後半まで東海道として使われていた道路です。当時の東海道は鎌倉方面から南下して三浦半島を横切り、海を渡って房総へ向かうというルートだったと考えられています。

古東海道については、以前に何度か記事で取り上げたことがあります。

横須賀市のウェブサイトに載っているコースを歩いてみたり、

三浦半島と房総半島を結ぶ海の道について考えてみたり。

しかし古東海道は「三浦半島のどこかを横断して海を渡り、房総半島へ向かった」ということ以外、詳細がよく分かっていない道です。別の地域の調査結果などから分かっていることを総合すると、以下のような道であっただろうと想定されています。

・高速道路のようにまっすぐ

・道幅は10m前後

・三浦半島の終点は走水のあたり

・県立横須賀高校のあたりを通る

県立横須賀高校のあたり? と思われた方は、以下の記事もどうぞ。

この想定に沿って直線を引いてみると、以下のようになります。直線の相模湾側の始点はとりあえず国道134号線と県道246号線が合流するあたりにしてみました。

地理院地図に加工

西側(左側)の赤丸が県立横須賀高校。東側が走水神社です。黄色い丸は、北側(上側)が大津古墳群、南側が安房口神社です。大津古墳群は古東海道の管理運営と関係があるのでは、という説から地図に載せてみました。安房口神社は日本武尊やまとたけるのみことが訪れたという伝承があり、そのとき通ったのが古東海道かも(日本武尊が実在の人物だったとして、時代的に古東海道が存在したかどうかはかなり微妙なところですが)ということから載せています。

このルートの嬉しいところは、大津古墳群のすぐ脇を通るということ。古墳は古代の交通と関係があると言われています(ただ、国が作った道路の場合は必ずしも古墳と関係があるとは言えないみたいです)。

難点は安房口神社からは少し遠い(このあたりは丘陵部なのでちょっと寄り道、というわけにもいかなそうです)ので日本武尊が参拝するのが大変そうなところ。それと、馬堀のあたりで当時の海の中に入りこんでしまいそうなところです。当時は海岸線が現在よりもっと内陸に入り込んでいたと考えられています。古代道路はあまり海の近くを通らないように設計されていたそうなので、その点もちょっと引っかかります。

じゃあたとえば、今回見つけた傾斜が緩やかなところが道路の名残だったら、どうでしょうか? 気になる場所を全部地図にプロットして線を引き直してみると、こうなりました。

地理院地図に加工

水色の丸が気になったポイント。だいたい直線上に並んでいます。細い緑のラインで線を引き直すとより安房口神社に近く、海のそばを通らないルートができました。

実際に歩いてみよう

こうなったら現地を見てみなければ始まらない。地図上の場所は横須賀市根岸ねぎし町と公郷くごう町にまたがっていて、そこまで広い範囲ではありません。傾斜になっている部分そのものは直接歩けないかもしれないけど、とりあえず行ってみましょう!

今回の最寄りは「北久里浜」駅。今回は先ほどの地図でいうと一番南側から歩きはじめて、一番北側の公郷で散策を終えるつもりです。

出口を出たらすぐに右に曲がって線路を渡ります。

道なりにまっすぐ進みます。

ひとつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

該当する箇所にナンバーを振ってみました。この順に見ていこうと思います。

しばらく歩くと丁字路があります。ここがひとつめ。これはとても分かりやすいです。山に深く入りこんでいく坂道。旧版地図で確認したところ、明治のはじめごろも同じ形の道がありました。

ふたつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

左手に曲がる道を進み、この生け垣のあるお宅の前でもう一度左に曲がります。

踏み切りを渡って右へ。

細ーい道を進みます。

「通り抜けできません」の表示。この先は突き当たりでした。写真を撮るとどうしても民家が近くに写り込んでしまうのでお見せするのは断念します。が、突き当たりの先にある丘陵には明らかな鞍部あんぶ(山々の連なりの、へこんで低くなっているところ)があります。これはもともと道があってもおかしくないな……と今度は迅速地図を確認したところ、やっぱり道がありました。

出典:農研機構農業環境研究部門 左側と右側は同じ場所を示しています。

左側の地図で「埋葬地」と書いてあるところの少し南に、尾根をまたいで続く道があるのが確認できます。やったー。というわけで、丘陵の尾根側から様子を確認してみましょう!

来た道を戻り、踏み切りを渡らずにそのまま進むと階段が見えてきます。Googleマップだと道が続いていないように見えますが、ちゃんと下から上まで上れます!(急だけど。)

上りきった道を少し進むと右手に崖地が見えてきます。ここが先ほど行き止まりだった場所の上。

ちなみに突き当たった先は馬門山海軍墓地でした(先ほどの迅速地図で「埋葬地」と書かれていた場所です)。

今となっては斜面に草木が生えてよく分かりませんが、ここが道だったようです。そして振り返ると……。

みっつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

こちら側はみっつめの傾斜面、最初に見つけた箇所です。現在も道です! 坂道を下った下のほうまで見えていますね。行ってみましょう!

下って下って

よっつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

下った先、目の前がよっつめの傾斜面です。草木がもさもさ生えていてよく分かりませんが、遠目で見るとうっすら鞍部になっているような。この場所は馬門山海軍墓地の敷地内なので、入れます。行ってみましょう!

直接上れる道はないので、迂回していったん国道134号線に出ます。

この看板を目印に曲がり……

馬門山の入口に到着しました。

ゲートを入って少し進んだ右手が先ほどの鞍部っぽいところ。実際に上に立ってみるとへこんでいる……とまでは思いませんが、さっき歩いてきた坂道はよく見えます。そして、(またしても)振り返ったところが……

「このさき、がけ! キケン!!」の張り紙が。と、いうことは、ここから降りようとした人、過去にいましたね……。現在ではこの場所を外から見ると竹やぶとしか思えません。

電柱の奥の薮が「この先、がけ! キケン!!」から降りていったあたりになります

竹やぶが広がる前は歩けそうな細道がついていたのかもしれませんね。

いつつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

よっつめといつつめの間はちょっと離れています。国道134号線を渡るために少し大回りして、裏道へ。詳細は記事末尾のマイマップでご確認ください。

入りこむことはできませんが、すごくはっきりとした鞍部が見えます! こちらは迅速地図には道が書かれていなかったのですが、旧版地図で見ると尾根の手前までは小道がついていたのがわかりました。となるとこの丘陵の反対側も見ておきたいもの。

むっつめ

出典:カシミール3D スーパー地形セット

いつつめとむっつめも少し距離があります。丘陵をぐるっと回り込んで歩くのですが、その途中に三浦義村ゆかりの「千片神社」があります。ご興味のある方はついでにお立ち寄りください。

本来「この先」だったはずなのに、「この場所」で落石が発生してしまったらしい立て看板を見つけました。たしかになにかがぶつかったような形跡が。

地図のルート通りに歩いていくと行き止まりになります。ここで右を向いてください。

こちらがむっつめ、やはり鞍部になっています。

しかし鞍部になっているだけでは何もわからないですよね。だんだんむずがゆくなってきました。でもさすがに私有地にわっしょいと分け入っていくわけにもいかないので、「どうなってるのかなー」と思いながらこの場をあとにします。

ななつめ

ななつめとやっつめは、カシミール3Dのスーパー地形を見ているだけでは気づきませんでした。比較的最近開発が入って、地形が変わってしまっていたようです。国土地理院の傾斜量図(1999年当時のデータを元にしているようです)には傾斜面の形状がまだ残っていたので、たまたま地理院地図を見ていて追加で気づいた場所です。せっかくなのでついでに見て帰ろうと思います。

本当ならスクリーンショットで地形図をご覧に入れたいのですが、画像の書き出しがあまり上手くいかなかったので以下でご覧ください。該当の箇所にカーソルが当たった状態で表示されると思います。

その、ななつめ。みごとなまでの二段構え擁壁になっており、現状からはどのような形状をしていたのかわかりません! Googleのストリートビューでも、一番古い2010年は工事中で仮囲いの中、次の2014年にはすでにこの擁壁ができあがっているため以前の様子は分かりません。

こちらの住宅地は「サンタスカーサ横須賀ヒルズ」という名称のようです(初めて知った)。せっかくなので上まで上って様子を見てみましょう。やっつめも気になりますし。

行きはよいよい、ということで最初は緩やかに見える坂道を上っていきます。もちろん、ここは横須賀。この後傾斜がきつくなりました。

思いもかけないご褒美としては、先ほどのむっつめの鞍部がきれいに見えました。ここにまっすぐ道が通っていたのだとしたらすごいなあ。

とにかく圧倒的な擁壁

上りきった住宅街を歩いていると突如現れる、変則的な通り道。こちら、開発前からあった道をそのまま利用しているようです。位置的には「ななつめ」からまっすぐ進んできたところにあたり、もしかして……という妄想が膨らみます。

やっつめ

最後のやっつめも、(もちろん)擁壁化していて以前の姿はわかりません。ただ、脇に長い階段がありますので下に降りることはできます!

見晴らしはたいへんよい
ずんずんと降りていきます

降りきったところ。この擁壁の中は現在雨水調整池になっているそうです。

お疲れさまでした!

と、いうわけで、煮え切らないながらも今回の散策は終わりです。そこそこのアップダウンがありましたが、スタート時からはだいたい1時間。ちょうどぷらから的散策時間(「プラ」ス1時間、ここ「から」歩く)で歩くことができました。お帰りは「公郷神金」バス停から衣笠もしくは堀ノ内方面へ行けます。

普段から目を皿のようにして地形を眺めているつもりではあるのですが、今日のように(比較的)ゆるやかな傾斜がほぼ直線上に続いている地形、古東海道が通っていたとおぼしきエリアではなかなか見つけられたことがありません。もしほかにもこんな地形にお気づきになった方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。古代道路だったとしてもじゃなかったとしても、歩いてみたらなにか発見があるかも。

それにしても本日の高低差、仮に古東海道がこのルートだったとしても歩きたいかといわれたら歩きたくないな……と思いました。おそらく偉い人たちは馬とか輿こしとかに乗って移動できるんだと思いますが、我々みたいな庶民は自分の足で歩かされるはず。いくら仕事だとしてもしんどいです。トンネルを掘ることができる現代ってすごいんだなって思いました。

今回の散策ルート

古東海道かも - Google My Maps
(2026年7月1日公開)

赤星友香

横須賀ぷらから通信主宰。クロシェター / ライター。普段はpiggiesagogoという屋号で編み図を作ったり、別館1617という自主レーベルで本を作ったりしています。横須賀育ちの北関東在住で、わりとつねに三浦半島に行く口実を探しています。

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