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【横須賀中央】よこすか海岸通りを歩く(10,000メートルプロムナード)

最近は横須賀市が35年ほど前に設置した「10,000メートルプロムナード」と呼ばれる区間を歩いています。前々回がJR「横須賀」駅から三笠公園まで。前回は海辺つり公園から馬堀海岸の遊歩道(通称マボチョク)手前までをご紹介しました。

今回歩いたルート

よこすか海岸通り(10,000メートルプロムナード) - Google My Maps

今回歩きたいのは、前回までの2記事の間に当たる部分。おもに平成町を走る「よこすか海岸通り」の緑道です。三笠公園を出て歩いてきて、最初に突き当たる交差点から散策を開始します。

木陰の散歩道

諏訪小学校前

諏訪小学校前からよこすかポートマーケット前にある駐車場方面を撮った写真。ご覧の通り、道のこちら側は木陰になっていてかなり日差しがさえぎられています。

道の反対側から見たところ

木陰がないほうから見ると一目瞭然ですね。10,000メートルプロムナードの計画で市街地側に幅広い歩道をつくって緑地化することが定められていて、それにしたがって道が作られています。

それではさっそく緑道を歩いていきましょう。日陰なのがありがたいです。

ちなみに取材日は5月中旬です。横須賀でも最高気温が27度くらいあって、5月としてはかなり暑い日でした。が、今年の夏はそれどころではない猛暑が続いています! とてもではないけれどお散歩に適した気候とは言いがたい。お読みになって「歩いてみようかな」とお考えの方は、ぜひ暑さが落ち着いてからお出かけくださいね。

あ、また……

横須賀ロータリークラブも木の実食べ推し。これは以前にご紹介した「グリーンウォッチングヨコスカ」の時代(そしてもしかしたらもっと前)から続く横須賀市の伝統(?)です。

植栽はある程度のかたまりごとに樹種を変えてあります。マツの仲間の下は日差しが届きやすいですね。そして……

こちら。三笠公園にもたくさん植わっていました。横須賀市の食べられる木の実代表(?)ヤマモモももちろん(??)あります。

ちなみにヤマモモは寒さに弱い木で、自生の北限が関東南部あたりとされているそうです。もっと南でないと自生しないと言っている人もいるので、横須賀あたりは自生するかどうかギリギリのラインといったところかもしれません。そういった関係もあって横須賀にはヤマモモがたくさん植えられているのかもしれませんね。

なぞオブジェ × なぞリノベ

よこすか海岸通りといえば、この幅広い歩道を活かして設置されたたくさんのオブジェもみどころのひとつです。最近横須賀市は「よこすか海岸通りリニューアル基本計画」を定めて刷新をはかっているようです。取り組みの一環としてオブジェのリニューアルや壁画の導入などが進められているのですが……。

手前がもとからあった石垣調の塀。そして奥のほうは塀が上塗りされてウォールアートが施されています。

やや唐突な感がありますが、こちらが2年ほど前にできた「YOKOSUKA GENIC STREET」です。場所としては「ノジマモール横須賀」の手前あたり。

案内板
少し先に進むと見晴らし台がありました

このあたりは横須賀市によって「海辺ニュータウン」という名称がつけられています。わざわざ名前をつけることからもわかる通り、一種のモデル地区としてゾーニングや景観作りをしていくことが定められていました。

現在では少しルールが変わっているようなのですが、もともとはあまり明るい・どぎつい色を使わずに景観を整えていくということが決められていたようです。なので以前からある施設を見ると、だいぶ落ち着いた色合いをしていますね。

こちらはうみかぜ公園前のウォールアート

一方、最近「よこすか海岸通りリニューアル基本計画」によって導入されたウォールアートはめちゃくちゃカラフルなものが多い印象です。

耐久性は課題かも

これは場所によるのですが、ウォールアートの多くは粘着性のシートでもとの構造物を覆うという手法をとっています。そのためか海風が強いためか、施工して数年ですでに劣化が見られるものも。メンテナンスは今後の課題になっていきそうです。

元のオブジェと、

上から施されたウォールアート。

木陰の少ないエリアに生えているヤマモモたち

YOKOSUKA GENIC STREETからしばらくの間、頭上を覆う植栽が減っています。端的に言うと直射日光にさらされます。一方、このエリアには集合住宅と商業施設が多いので、自宅から普段のお買い物をするために歩いて行き来する方がそれなりに見られました。

住民のことを考えるともう少し日よけがあったほうがいいんじゃない? という気がしますが、そうすると植栽計画を改めなくてはならなくなる……。なかなか難しいところです。

「映え」と生活は共存できるのか

エイビイ平成町店のある交差点までやってきました。目隠しのようになっているウォールの先には、壊れてしまってもとの状態がよくわからないオブジェが設置されています。

目隠しの裏側。この場所にはもう少しいろいろなものが設置されていたと記憶しているのですが、老朽化により撤去されたのでしょうか。結果的にこの白いジャングルジムのようなものだけが残りました。

写真を撮るちょっと前まで、近隣住民とおぼしき方がこの偽ジャングルジムに腰掛けて休憩されていたんです。ただわたしが写真を撮っていたら、気を使っていただいたようで立ち上がってそのままエイビイ方面へ……。

そこで、あれ、こういうのじゃないんだけどな……と思いました。

木陰の座れるスペース。こういうの、いいですよね

横須賀市は先ほどのGENIC STREET完成時に「SNS映え間違いなし!長さ50m「撮れ高最強」のフォトジェニックなウォールアート「YOKOSUKA GENIC STREET」が誕生」とタイトルを打ったプレスリリースを出しています。

SNS映え間違いなし!長さ50m「撮れ高最強」のフォトジェニックなウォールアート「YOKOSUKA GENIC STREET」が誕生(2020年11月19日)
 

「SNS映え」「撮れ高最強」「フォトジェニック」。これらの言葉から推察できるのは、非日常で「いいね」を集めやすい写真が、ここに来れば撮れますよ、というお誘いがかけられているということです。

一般的に「いい写真」には構図が大切だと言われています。何を撮って、何を撮らないか。何を中心にして、どう見せるか。普通に考えると「ウォールアートを撮りたいな」と思ったとき、近くを通ったり座ったりしている地元住民を「映える」構図で収めることはそうとう難しいでしょう。やっぱりまわりに人がいない状態でウォールアートだけを撮ったり、自分や同行者を記念写真的にフレームに収めたりしたいと思うはずです。

ミロコマチコさんの絵で覆われたスツール。これだって座っている人がいたら撮れない、否、撮っている人がいたら座れない。

そしてみんなそう思うから、地元の方は遠慮してどいてくださったりするんでしょう。でもそこがお買い物や散歩の途中に一休みする場所だったら……? 映える写真を撮ることって、そのためにほかの人の日常生活を止めてもらってまですることだったっけ……? そう考えて、よくわからなくなってしまったんです。

横須賀海岸通りリニューアルの基本方針は『 魅力的かつ親しまれる道=みんなの暮らしの舞台となる道 』なんだそうです。

よこすか海岸通りリニューアル基本計画
 

ウォールアートは「魅力」を生み出すための仕掛けなのだと思います。そこに「映え」を持ってくると「みんなの暮らしの舞台」はどうなるんでしょうか。仮にとってもたくさん観光客が訪れたら? 近年京都市がインバウンド対応に苦慮しているのはニュースで見かけます。そこまでとは言いませんが、もしかしたら日常のお買い物もそれまでよりちょっと大変になるかもしれません。どこを向いて、何を目指していくのか。これはとても難しいことだと思いました。

寄り道:平成緑道緑地

そんなことを考えながらてくてく歩いて、とある曲がり角までやってきました。一見するとマンションの公開空地にも見えるこの遊歩道、「平成緑道緑地」という名前がついています。

むむっ

しばらく進むとおもしろそうな石像が建っています。一般道を渡ってさらに奥まで行ってみましょう。

おや、これは……?
背びれのような……?
いるか!

石から生まれつつあるイルカたちが随所に置かれています。鼻先だけ出しているのもいれば、おなかを出してひっくり返っているヤツも。

イルカの井戸端会議

緑道の突き当たりにはイルカのたまご(?)的な丸石が。どうして石からイルカが生まれることになったのか、この緑道におかれることになったのか。いろんなことを想像しながら楽しく歩ける道になっています。

リノベーションと著作物の複雑な関係

寄り道を経てもう一度プロムナードへ戻ります。目の前には古代神殿めいたなぞの構造物が。

謎の構造物を横から見たところ。公衆トイレなんです。

ここは手すりがついていて登ることができます。てっぺんで振り返るとなんだか不思議な気持ちに。

このオブジェはもともとアート作品として設置されたものなのだと思うのですが、2022年ごろにリニューアルされました。

よこすか海岸通りストリートキャンバスウォールアート制作者募集
 

以前も横須賀市はパブリックアートに対してあまり優しくない、と書きました。

この例も、正直どうなんだろうな、と思ってしまいます。表現物には著作者人格権が存在しているので、著作者が存命であるかぎりは公開する・しないや改変について著作者の意向を無視することはできません。誰でも見ることができる公共の場に設置された作品はとくに注意が必要です。

作者の同意を得ずに改変をしてトラブルに発展した例は、最近だと渋谷のミヤシタパークに設置されていた「渋谷猫張り子」が記憶に新しいです。

吉田朗の作品に対して行われた著作権の侵害、無断改変された作品の公開等の問題について。

作品として設置されたものをどう管理していくのかは、設置した自治体があるていど責任感を持って考えていってもらいたいのですが……。

ちなみにトイレとパイプのオブジェがあるのは横須賀魚市場の向かいあたり。ここから「堀ノ内」駅方面へと向かう道沿いにも10,000メートルプロムナードの街路灯が設置されています。このあたりは以前歩いたグリーンウォッチングヨコスカ三春町コースのルートでもあります。

しばらく歩いて下町浄化センターの辺りまでやってきました。もうすぐ海辺つり公園の入り口が見えてきます。と、ここで個人的にびっくりしたものが待っていました!

あれれ?

とても見覚えのある作風だぞ! と思ってサインを探します。

あったー!

HITOTZUKIの壁画です!

もう10年以上昔のことなのですが、以前の仕事でHITOTZUKIのおふたりに壁画を描いていただいたことがあるんです。場所は千葉県松戸市根本。地元の皆さんがとても気に入ってくれていて、壁画が掛かれた場所には「根本壁画通り」という名前がついています。

こちらが千葉県松戸市にあるHITOTZUKIの壁画

今回10,000メートルプロムナードに描かれた壁画は、以前壁泉があったところ。階段上の噴水はもう水を出さなくなってしまったようですが、その部分も含めて壁画になっています。

よこすか海岸通りに70m級大規模壁画アートが堂々完成!(2023年4月10日)
 

思いがけないところで懐かしい人に出会ったような、そんな気持ちになりました。横須賀市のリリースによると壁画が完成したのは今年の春。まだできたてほやほやでした。

海辺つり公園前に到着

最後に個人的なサプライズを迎えつつ、海辺つり公園前の歩道橋までやってきました! ここから先は以前に記事にしてあるので合わせてご覧くださいね。

赤星友香
赤星友香

横須賀ぷらから通信主宰。クロシェター / ライター。普段はpiggiesagogoという屋号で編み図を作ったり、別館1617という自主レーベルで本を作ったりしています。横須賀育ちの北関東在住で、わりとつねに三浦半島に行く口実を探しています。

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